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第1部 一章【財前姉妹】その10 第十三話 威嚇

Author: 彼方
last update Last Updated: 2025-06-21 10:00:00

132.

第十三話 威嚇

 ミサトから満貫をアガったことにより8000加点したカオリ。それはミサトと16000点差ついたと言う事だ。それくらいは理解していた。しかし、ミサトのあの様子を見てマナミは鋭く察知していた。

 おそらくミサトは選択ミスによりアガれる手を逃している。そもそも、アガれる手がきてないのにあのミサトが捨て牌3段目から放銃なんかするもんか―― と。

 だとすれば、つまり12000を多分カオリが振ってたんだろう。そういう選択も可能だったと読むとカオリと24000点差つけてトップ目に立つはずが、逆に16000点差つけられてラス目になった。それはまだ東場なので順位点のことは無視するとしても、それでも上下40000点の違いがあるということ。そこにマナミだけは気付いていた。なのでこのゲームは驚異的ファインプレーをしたカオリを警戒していかなければならない! とマナミの本能が警鐘を鳴らす。

 するとカオリが動き出した

「ポン」

 一萬のポン。そしてこの捨て牌……。カオリの狙いはおそらくチンイツだ。

 既に8000加点している状態からそんな大物手を作られては決定打になってしまう。これは絶対に阻止しなければ。

 カオリの下家に位置するマナミはこれを見て放置しておく程あまい打ち手ではなかった。

「チー」

 ⑦⑧⑨をペンチャンチー(ドラは⑧)

「ポン」

 西をポン

 瞬く間の2副露。マナミから一気にピンズホンイツの気配が出る。

カオリの思考

(うぐっ……! コレはやりづらい! ピンズはドラ色だ…… ここで無視

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